尿もれ百科事典

過活動膀胱

尿を膀胱内にためておく体の働きは、健康な人にとっては日光の恩恵くらいに当たり前のことですが、実は健康な人であっても「尿を膀胱内にためておく機能が低下する」ことは珍しくありません(蓄尿機能障害)。

特定の病気やけががなくても、蓄尿機能障害は、加齢などごくふつうの要因によって起こります。

蓄尿機能障害のうち、膀胱からの「トイレへ行きたい」という感覚(尿意)が少々ワイルドで、尿意が唐突に湧き上がってがまんするのが難しい場合、「過活動膀胱」と診断されます。

過活動膀胱の自覚症状は、トイレへ行って排尿の態勢に入るのが間に合わず尿をもらしてしまうという切迫性尿失禁の他、大事な用件も中断してすぐにトイレへ行かざるを得ないという不自由、排尿の回数増加(頻尿)、夜間トイレに何回も起き出す(夜間頻尿)などがあります。

過活動膀胱であり切迫性尿失禁もある、という人がいる一方、過活動膀胱にはあてはまるが尿もれはない、という人もいることになります。ちなみに、トイレの回数が多いが尿意切迫感はない、という場合は、過活動膀胱には含めないのがふつうです。

過活動膀胱の治療には、認知行動療法、薬物治療、物理療法(刺激治療)などがあります。

尿もれや頻尿を治療する薬剤のほとんどは、過活動膀胱に対する治療薬にランクされています。このことは、腹圧性尿失禁の治療が手術と骨盤底トレーニングであることと明瞭な対照をなしているのです。

過活動膀胱(overactive bladder; OAB)は、尿意切迫感を中心とする症候群として「切迫性尿失禁の有無に関わらず、通常頻尿および夜間頻尿を伴う尿意切迫感で、感染や他の明らかな病的状態は除外する」と2002年のICS(国際禁制学会)で新しく定義されました。

中高年のQOL(生活の質)を下げる重要な疾患との認識が進んでいますが、若い年代で悩む人も少なくありません。

「尿意切迫感・切迫性尿失禁・頻尿」が重要な3つの症状で、過活動膀胱と診断するためには、尿意切迫感がなければならないことになっています。

尿意切迫感があると、それを防ぐため昼夜の排尿回数が増えがちになりますが、一方で頻尿でも尿意切迫感がないものは過活動膀胱に含めません。

切迫性尿失禁では、帰宅して玄関のドアを鍵で開ける間や、トイレのドアノブに手をかけた時にもれてしまう「ドアノブ尿失禁」、台所仕事などで水に手をつけた時に急な尿意を感じてもれる「手洗い尿失禁」が典型的な形です。

過活動膀胱は、脳梗塞などによるものを除けば、原因を明確に絞り込めないものが大半です。膀胱の平滑筋や知覚神経の働き、中枢神経の関与、利尿のスピードなど多くの要因が関与しているのです。

生活の工夫としては、排尿日誌をつけ、膀胱トレーニングで徐々に排尿間隔を広げるようにしていきます。尿意切迫感を感じたら慌てず深呼吸し、膀胱の収縮の波がおさまったところでトイレに行くようにしたり、骨盤底トレーニングでこらえるコツをつかむなどのことも役立ちます。

過活動膀胱というくくりは、多くの要因が重なっていて対症療法しかできないものと、最終診断に至る前の暫定的な診断しかできていないもの、という2つの部類の患者さんが混ざりこみます。

過活動膀胱と診断され、投薬を続けていてはかばかしくない場合には、泌尿器科で診断を受け直すようにしましょう。

(監修/中田真木)

※尿もれを引き起こす原因の特定は個人の判断では難しい場合がありますので、専門医にご相談ください。

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